心理学のトラウマ克服療法として、眼球運動を利用した手法が広がりつつあります。EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動により過敏性をなくし再処理する方法)というその療法は、いままで治療が困難だったPTSDなどのトラウマを、いとも簡単に治癒してしまった事例が頻発したことから、‘奇跡の療法’とも称されています。
開発者のFrancine Shapiro氏は元々New York大学で英文学を専攻していたのですが、乳がんの宣告を受け「英文学をやっている場合ではない」と変心し、心身の健康をいかに保つかということを研究テーマにし、心理療法や鍼治療などを勉強しはじめました。1897年のある日、公園を散歩していた時、自分の心がスーッと楽になるのを感じました。その時のことを振り返って内観してみると、目を左右に素早く動かしていたことがわかりました。すごい発見かもしれないと思った彼女は周りの人に「いやなことを思い出して目を動かしてみて」とお願いします。すると、彼らのいやな気分も軽減することが分かったのです。これを、体系的な治療方法として確立したものがEMDRです。
EMDRの優れたところは、治療時間を短縮できる点にもあります。それまでの療法では、トラウマを消化するため、どうしても時間の助けが必要でした。EMDRでは眼球運動の助けを借り、脳がトラウマを短時間でポジティブイメージへと再処理することが可能となりました。眼球運動が脳および身体の正常な働きを促すと考えられています。
詳細や症例は専門書にゆずりますが、確かに眼球運動は気分をリフレッシュさせてくれます。日々、私たちの受けるストレスに対する処方箋の一つになります。みなさんも、ためしにいやなことを思い出しながら眼前で手を振ってみてください。そのストレスはきっと軽減することでしょう♪
また、EMDRはストレスの軽減やトラウマの克服だけではなく、積極的な‘肯定的イメージ’の強化にも役立ちます。それゆえ、アスリートのイメージトレーニングなどにも導入されています。眼球運動により身体が弛緩された状態になり、副交感神経が発動し心身がよいアイドリング状態になるのが感じられます。ストレスから解放されたら、ぜひポジティブシンキングにチャレンジしてみてください♪
眼球運動と脳の関係はこちらを参照してください。