現在、近視矯正手術で主流となっているのが‘レーシック’です。角膜を薄く切り、缶詰のふたを開けるように、角膜表面(フラップ)をめくり上げ、レーザーを照射して角膜の形を変えることにより近視を矯正します。レーザー照射後、ふた(フラップ)で角膜を覆います。
レーシックは大変に技術が成熟した手術となっています。米国でも失明の報告はありません。ただ、万一のためにきちんとリスクの説明をしてくれる眼科医師に相談してください。
○レーシックのリスク例
レーシック手術で使用するエキシマレーザーは、アルゴンとフッ素の混合ガスを使った波長193nm(ナノメートル)で、熱を出さずに高エネルギーで分子間の結合を断ち切り組織を蒸発させます。非常に高エネルギーでありながら水分に吸収されやすく、限られた範囲にしかエネルギーが到達しません。そのため、眼底まで届いて網膜などを破壊する恐れはありません。
○エキシマレーザーの特長
エキシマレーザーはレーシックのみならず、のちにご紹介するラーゼック、エピレーシック、ウェーブフロントレーシックでも共通して使用されます。
レーシックではフラップ(ふた)作成の際、角膜の実質までカットしてしまうため、角膜層が薄くなり強度近視には対応できませんでした。そこで登場したのがラーゼックです。
ラーゼックでは角膜上皮をはがす作業にアルコール溶液を使います。そして、浮いた角膜上皮を器具を使い剥離しフラップを作ります。エキシマレーザー照射はレーシックと同じです。
ラーゼックでは角膜上皮をはがす際、アルコール溶液を使うため、上皮細胞の一部が死滅します。そこで、アルコールではなくエピケラトームという機械を使い、上皮を削り取るエピレーシックが登場しました。
エピレーシックでは角膜の表面ギリギリ、ボーマン膜でカットします。そのため、レンズ形状作成のための角膜層が厚くなり、強度近視やもともと角膜が薄い人でも対応できます。フラップが薄くなる以外、手術方法はレーシックと同じです。
レーシックやラーゼックではフラップを作ります。そのため、術後の生活ではなるべく目に衝撃を与えないように振る舞わなければなりません。格闘家や自衛隊員など、仕事上どうしても目への衝撃が避けられない人はPRKが向いています。PRKではフラップを作らず直接角膜にレーザー照射します。無くなった角膜上皮は新陳代謝で再生されていきます。術後は神経が露出するためレーシックやラーゼックよりも疼痛を感じます。
角膜の形状は個々人で違います。これまでの、レーシックでは一律にレーザー照射をしていたため、光学収差が残ってしまい、グレアやハローなどが現れる場合がありました。そこで登場してきたのがウェーブフロントレーシックです。ウェーブフロントレーシックでは、照射するレーザーのサイズを変えて、任意の場所にスポッティングします。検査時に得られた収差情報をもとに、一人ひとりに最適なレーザー照射を行います。これにより術後、より快適な視覚を得ることができるようになりました。
収差とは光の歪みです。下の図のように角膜というレンズを通過する際、中心部と周辺部で光の屈折の仕方が異なり、網膜に結像する際にバラバラな情報となります。ちなみに眼鏡では非球面レンズを使いこの収差を軽減します。
もともと正視あるいは遠視の方は角膜の形状を利用して、遠近両用にすることができます。レーザー照射で同心円状に角膜形成を行い、角膜の中央が近用、周辺部が遠用になります。ただ、遠方・近方どちらも少しぼやける感じになるため、視力に敏感な人や視力を重視する職業の人には向いていません。この手術は近視の方は不適応です。