フィッティングとは、眼鏡の持つ光学的な性能を最大限にまで引き出し、美的感覚を十分に満足させ、力学的にも快適な装用感を得るためにフレームの調整を行なうことをいいます。
フィッティングを行う前にフレームの確認を行います。
フロント部:左右のリムのカーブ違いや溝が返っていたり歪んだりしていないか。また、ブリッジの反り具合が適当で、上から見て左右のレンズ面がねじれていないか確認します(にらみを見る)。
クリングス・パット部:左右のクリングスの形、位置、高さ、開き方、パットの角度が揃っているか確認します。
テンプル部:左右テンプルの開きを平行もしくは、やや広めに調整してあるか? 横から見た時、テンプルの傾斜角度が左右揃っているか? また、テンプルをたたんだとき、きちんとテンプルが重なるかを確認します。
以上のことが調整できたら、実際に顔に合わせていきます。
以下、これらを一つずつ見ていきましょう。
前傾角(傾斜角)は遠用が10°~15°、近用は20°~25°、遠近両用は15°~20°を目安とします。レンズ下部が頬にあたらないように注意してください。
近用眼鏡の場合、レンズの光軸が内方に向いているのが望ましいため、視距離に応じて反り角をつけます。
遠用眼鏡においては、下図のようにフレームのリムが4ポイントタッチになっていなければなりません。また、光学的には上から見てレンズの光軸が平行になるようにします。
耳および側頭部にテンプルが平均的に接するようにします。通常、耳の付け根の頂点からテンプル先まで、側頭部と耳後方まで平均した強さで密着しているのがよく、ゆる過ぎると前方に重量がかかって下がりやすくなります。またきつ過ぎると長期の装用に耐えられなくなり、特にこめかみに圧力がかかると、眼鏡は前方に押し出されて下がりやすくなり、耳の後ろが痛くなったりします。丸顔の人や子供の場合、側頭部が比較的広い人が多いので、少し広めに開きを取り、弓なり状に顔を包み込むように調整します。
眼の中心がフロント玉型の中心よりもやや上にあるくらいの位置が、もっとも見栄えが良くなります。歩く際、下を見る機会が多いのでレンズの下部を広く取ります。正面から見てフレームが傾いている場合、光学中心のずれにより装用者の見え方が悪くなります。遠近両用(累進レンズ)の場合は顕著ですので、特に気をつけましょう。
傾いている場合の直し方は、フロント玉型が上がっている方のテンプルを上げます。また、低い方のテンプルは下げて調整します(下図)。
角膜頂点とレンズ後面までの頂間距離は12㎜です。レンズの矯正効果、像の大きさ、視野の変化、収差の影響も考慮し適切な距離を保つことが必要です。
詳しくは角膜頂間距離の光学的影響を参照してください
テンプルの曲げが、耳にフィットしているか確認します。耳の付け根の頂点から後方にかけて、カーブ、凹凸に合わせて平均に当たっており、痛みや圧迫感、ゆる過ぎるためのずれ落ちがないようにします。また、点や線で押さえるのではなく、面でフィットするようにします。
曲げる位置が早い場合、フレーム後方(先セル)が浮き上がり、耳鼻が圧迫されメガネがずり落ちやすくなります。反対に曲げる位置が遅い場合、押さえが弱くなりこれも前にずり落ちやすくなってしまいます。場合によっては、テンプルをカットすることも必要です。
先セルのフィッティングの際、ガラスペン(水性ダーマトグラフ)で曲げの位置をチェックしておくと便利です(下図)。
鼻パットが鼻骨の適切な位置に合わせます。点や線で当たらず面でフィットするように気をつけます。鼻に対するパットの位置は、鼻柱の奥に食い込むくらいの気持ちで合わせると、比較的メガネがずれ落ちません。この際、目がしらや涙腺を圧迫しないように注意します。パットの鼻幅を狭めるだけでは、鼻柱の上に乗せたようになるため、返ってずれ落ちやすくなる場合もあります。クリングスを広げ鼻柱の奥に位置させることを第一に考え、フィットさせていきましょう。
以下のポイントをチェックし、最終確認を行いましょう。