私たちが眼の良し悪しを考えるとき、通常は視力の良し悪しのことをイメージします。しかし、視力の良し悪し以外にも眼のトラブルが存在するのです。それは、調節不良や眼筋コントロール不良などです。上図のように眼は6つの筋肉でコントロールされており、動眼神経、滑車神経、外転神経の3種もの神経経路がり、とても繊細な作りとなっています。ちょっとややこしいですが、眼のトラブルは専門的に以下のように分類しています。
視機能問題
両眼視機能不良
1.輻輳不全
2.輻輳過剰
3.開散不全
4.開散過剰
5.融像性輻輳不良
6.基本的内斜位
7.基本的外斜位
調節機能不良
1.調節不全
2.調節過剰
3.調節反応不良
眼運動異常
1.眼運動機能不良(サッケード・パースート)
問題となるポイントは、輻湊、調節、眼球運動の3点です。
輻輳とは目を中心に寄せるいわゆる‘寄り目’のことです。反対に開散は寄り目を解く際に両目を外に開くことです。また、調節はターゲットに眼の焦点を合わせることをいいます。
調節は平滑筋(Smooth muscle)、輻湊は横紋筋(striated muscle)を使います。調節と輻輳は同時に起きますが、使う筋肉は違うのです。横紋筋は自覚的に動かせますが、調節は無意識に収縮します。眼においては調節ではゆっくりな、輻湊では早い反応が認められます。この、ゆっくりな調節が視覚上のペースメーカーとなっているのです。
眼球運動不良は、目をゆっくりと動かす(パースート)のが苦手な人や、素早く目を動かす(サッケード)ことができない人などが代表的な症状です。
米国のOPE(Optometric Extension Program)では近方作業こそ視的ストレスの主原因と考え、調節に焦点をあてて分析を行います。OPEでは調節と輻輳、2つの障害の比率は、調節関連が95%、輻湊関連が5%とされています。それでは、OPEが重要視する調節のトラブルからみていきましょう。
私たちの眼は毛様体筋という眼内の筋肉を収縮・弛緩することにより調節をしています。上図のように、毛様体筋にはミューラー筋(輪状筋)とブリュッケ筋(縦走筋)があり、前者は副交感神経支配、後者は交感神経支配となっています。この毛様体筋のコントロールが上手くできなくなるのが‘調節トラブル’です。
調節のメカニズムは上図のようになっています。眼の中のレンズ‘水晶体’の厚みを毛様体筋で変化させることによって、焦点を合わせています。調節トラブルではこれが困難になります。
調節トラブルに対しては、視覚トレーニングで毛様体筋コントロールの訓練をしていきます。詳しくは、
視覚トレーニングってなぁに? の調節訓練を参照してください。
また、近方調節を行うには副交感神経の働きが重要です。ストレスが多いと交感神経が活発になり、副交感神経の働きが低下し調節が難しくなります。適度な運動や呼吸法などで心身をリフレッシュして副交感神経を優位にしましょう!
視覚トレーニングでも回復しない方や眼の疲労がひどい方には、メガネを装用していただきます。メガネ装用で近方視による眼精疲労が激減します。
わたしたちは近方視の際、眼を真ん中に寄せるようにして焦点を合わせます。この眼の寄せが上手くできないのが‘輻輳トラブル’です。こちらも、調節トラブルと同じく輻輳トレーニングがあります。上図のように眼を真ん中に寄せたり(輻輳)、もどしたり(開散)して訓練していきます。
視覚トレーニングってなぁに の‘寄り目トレーニング’を参照してください。
トレーニングでも回復しない人には、プリズムメガネを装用してもらいます。眼の寄せを補助するメガネです。輻輳トラブルによる眼精疲労が少なくなります。
下図をご覧ください。眼球運動にはこんなにもたくさんの筋肉が使われています。これらの筋肉をその役割の通りに正確に使用することで、眼球はコントロールされているのです。また神経も
・上直筋、下直筋、内直筋、下斜筋→動眼神経
・外直筋 →外転神経
・上斜筋 →滑車神経
と3つの神経経路に分かれており、繊細な作りになっています。眼運動は非常に脳を使うのです。それでは、眼運動トラブルの種類と対処法を見ていきましょう。
眼運動トラブルには、衝動性眼球運動トラブルと滑動性眼球運動トラブルがあります。
衝動性眼球運動は目を素早く動かすことを指し、たとえば読書をするとき、行から行へ文章を移動する際に必要となります。さっさか眼球運動と表現するとわかりやすいかと思います。
滑動性眼球運動は目をゆっくり動かすような眼球の使い方で、トンボや蝶々を目で追うときなどが代表的です。こちらはゆっくり眼球運動です。
さっさか眼球運動が苦手な人は、文字を読むのが遅くなり、勉強嫌いになってしまいます。数字ボードを使い、さっさか眼球運動のトレーニングをしていきます。また、ゆっくり眼球運動はマースデンボールを使いトレーニングを行います。詳しくは、
の衝動性眼球運動トレーニング、滑動性眼球運動トレーニングを参照してください。