神秘!?視覚異常の世界

脳の一部が損傷を受けると、視覚異常の症状を示す場合があります。そんな視覚異常の世界から視覚と脳の神秘を垣間見ることができます。それでは、視覚異常の世界に足を踏み入れてみましょう。

視覚失認

下の絵は、脳のV1野の少し前方、後頭葉から側頭葉にかけてのある一部が壊れた患者が書いた模写です。右上の豚の絵を例にとると、上の豚を患者が模写したものが下に書かれた豚です。実によく書かれています。しかし、この患者に「あなたが描いたものは何ですか?」と質問しても、まったく答えられないのです。このような患者は、絵に描かれたものの記憶を失っているのではありません。なぜならば、それらのものを手で触れたり、それらが発する音(鳴き声)などを聞けば、なんであるかが即座にわかるからです。対象物が何であるかわからないという症状が視覚に限定されている、それが視覚失認です。

視覚失認

相貌失認

側頭葉内側部の底面にある紡錘状回が壊れると、視覚失認の特殊なケースが起こります。「知っている人の顔が分からない」というこの症状は相貌失認といわれています。自分が見ているものが顔であることはわかり、目じりにしわがあるとか、きれいな歯であるとか、顔の細かな描写はできるのですが、その人(知人・有名人)が誰であるかがさっぱりわからなくなるのです。彼らには人の顔がどのように見えているのでしょうか?

 

相貌失認の人にとって顔がどのように見えているか?にヒントを与えてくれる写真があります。「サッチャー錯視」と言われているその写真を見てください(下の写真)。

サッチャー錯視

英国の元首相、サッチャーさんがさかさまに映っています。どちらのサッチャーさんもそんなに違和感なく見られると思います。ところが、これを反転させると左右のサッチャーさんの表情が全然違うのがわかります。下の写真を見てください。

サッチャー錯視

右のサッチャーさんの穏やかで聡明な表情とは違い、左のサッチャーさんは妖怪のような顔をしていたのです。倒立させるとその違いが見えなくなる。相貌失認の人にとって人の顔は、わたしたちが‘倒立して見る’のと同じなのかもしれません。

 

過日、ハリウッド俳優のブラッド・ピットが相貌失認だと報道されていました。もし本当だとすると、彼にとって役者業は大変でしょうね(・_・;)

視覚性運動失効

頭頂葉の視覚野が壊れると「見ているものが何かはわかるが、働きかけられない」といった症状を示します。このような人はものや人の識別、認識には問題がないにもかかわらず、見ているものを操作することがうまくできません。

 

たとえば、それがコップであること、細長いこと、ジュースが入っていることなど詳細な描写をするのですが、目の前のコップに手をのばしてつかむことができないのです。このような症状は視覚性運動失効といわれています。視覚性運動失効の人は視覚情報に基づいて、目や腕や指をうまく制御することができません。

視覚性運動失行

上の絵を見てください。ポストに手を入れるという動作を、視覚性運動失効の人にやってもらったときの図です。この人はポストのスリットの角度を正確に言い当てることは可能ですが、正確に手を差し込むことができません。

 

同じことを最初に述べた視覚失認の人にやってもらうと、逆のことがおきます。視覚失認の人にとって、スリットの角度はもちろん、穴があることも不確かなのですが、問題なく手を差し込むことができます。

 

ホントに不思議な現象です。

半側空間無視

右側の頭頂葉に損傷を受けた人の中には、半側空間無視という症状が現れることがあります。この人にしたの図のような図形を見せてどのようなものが見えているかたずねると、「小さなAでできた四角」とか「小さなHでできたEの字」と実に正確に答えることが可能です。ところが、この人に「それでは、そのAの字すべてに鉛筆で印をつけてください」と頼むと下の図のようになってしまいます。左側の文字は無視してしまうのです。「すべて印をつけましたか?」とたずねると「すべて消した」と答えます。つまり、半側空間無視の人はものは見えているのに、物体の左側に行動を起こすことができないのです。

半側空間無視

半側空間無視の人に食事を出すと、ごはんを茶碗の右半分だけ、煮物も器の右半分だけ、魚も右半分だけ食べて左側を残してしまいます。このことは実に興味深いことを示しています。この人は自分の体に対して左側にあるものを無視して、右側にあるものにだけ箸をつけたのではなく、体の左側にある茶碗の右半分だけ、体の右側にある魚の右半分だけ食べたのです。自分の体を中心に左側を無視するのではなく、茶碗や器などのものを主体にそのものにとっての左側を無視するのです。このことを「物体中心座標による表現」といいます。

 

 

視覚異常の世界はいかがでしたか? ホントに興味深いですよね。人体の不思議を感じます。

参考文献

視覚異常や錯視、両眼視と脳の関係など、視覚に関することが学問的に述べられています。

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